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企業経営において、従業員の「解雇」は避けて通れない場面が生じることがあります。
しかし、その解雇が「不当」であると訴えられた場合、企業は重大な法的・社会的リスクに直面することになります 。
そこで、今回は、企業が不当解雇で訴訟を受けた際の初動対応から、具体的な法的戦略、弁護士に依頼することの重要性などについて、詳細に解説していきます。
目次
不当解雇で訴訟を受けた会社がまず確認すべきこと

不当解雇の訴訟は、企業の信頼性や財産に直接的な影響を与える可能性があるため、初期段階での正確な状況把握が極めて重要です。
不当解雇とは何か?会社が訴えられるケースとは
「不当解雇」とは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められる手続きを踏まない解雇を指します。
具体的には、以下のようなケースが「不当」と判断されるリスクをはらんでいます。
- 従業員への改善指導や教育が十分になされていない場合
- 整理解雇であるにもかかわらず、他の雇用維持努力を尽くしていないと判断される場合
- 懲戒解雇であるにもかかわらず、就業規則に明確な根拠規定が存在しない、または解雇手続きに不備がある場合
これらの事例は、「解雇権の濫用」として法的に無効と判断される可能性が高いです。
【参考】不当解雇にならないために!解雇・退職処理の適法な進め方
労働者からの訴訟内容の例(地位確認・未払い賃金・慰謝料など)
労働者が不当解雇を主張して企業を提訴する場合、主に以下の内容の請求がなされます。
地位確認請求
「自分はまだ解雇されておらず、会社の従業員としての地位を有している」ことの確認を求めるものです。これが認められると、企業は当該従業員を復職させる義務が生じます。
未払い賃金請求
解雇が不当とされ、従業員としての地位が継続していると認められた場合、解雇された日から判決が確定するまでの期間の賃金の支払いを求められます。
慰謝料請求
不当な解雇によって精神的苦痛を被った、あるいは名誉を毀損されたとして、その損害賠償を求めるものです。
不当解雇と判断される基準(裁判所の判断要素)
裁判所が解雇の有効性を判断する際には、以下の要素を総合的に考慮し、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」か否かを審査します。
- 解雇理由の客観的合理性
- 解雇手続の適正性
- 会社側の説明責任と証拠の有無
これらの要素がひとつでも満たされていなければ、解雇は「権利の濫用」と判断され、無効となる可能性が高いです。
訴訟を受けた直後の初動対応

不当解雇で訴訟を受けた場合、初動対応の迅速性と正確性がその後の訴訟の行方を大きく左右します。
訴状が届いた場合の流れと対応期限
裁判所から訴状が送達された場合、最も重要なのは指定された答弁書提出期限を速やかに確認することです。多くの場合、訴状の到達から約2週間で、裁判所に答弁書を提出することが求められます。期限を遵守できない場合、原告(労働者)の主張が認められた判決が下されるリスクがあります。
社内で確認すべき資料と証拠(就業規則・人事記録など)
訴訟に備える上で、社内に存在する関連資料や証拠を網羅的に収集・整理することは、企業の主張を裏付け、解雇の合理性を立証するために極めて重要です。初動段階で収集すべき主な資料は以下の通りです。
- 該当従業員の人事評価・注意指導の記録
- 出退勤データ、勤怠表
- 社内規則(就業規則、懲戒規程など)
- 解雇通知書、本人への説明内容の記録(メールやメモなど)
これらの資料は、「解雇の合理性」や「手続きの適正性」を立証する上で、重要な証拠となる可能性を秘めています。
従業員・関係者への対応と注意点
訴訟が提起された場合、社内の関係者から事実確認のためのヒアリングを行うことは必要です。その実施にあたっては、圧力と受け取られたり、証言を誘導したりするような言動は避けるべきです。
【参考】ハラスメント訴訟を受けた会社がまず取るべき対応・弁護士に相談する必要性について解説
企業が取るべき法的対応と戦略

不当解雇について提訴や労働審判の申立を受けた企業は、労働審判と民事訴訟の選択肢があることを理解し、和解交渉の可能性を探りながら戦略を立てる必要があります。
労働審判・民事訴訟の違いと選択肢
労働紛争の解決手段として、主に「労働審判」と「民事訴訟」の2つがあります。最近では、「労働審判」から始まるケースが増加しています。
労働審判
労働審判は、労働者と使用者間の個別の労働紛争を、労働審判官(裁判官)と労働審判員(労働関係の専門家)が間に入り、原則として3回以内の期日で迅速に解決を図ることを目的とした制度です。短期決着が期待でき、費用も比較的低く抑えられます。
民事訴訟
当事者の一方が労働審判の決定に異議を申し立てた場合には、自動的に通常の民事訴訟へと移行します。労働審判に比べて時間を要し、費用も高額になります。詳細な証拠調べや事実認定が行われるため、徹底的に争いたい場合には民事訴訟が適しています。
企業の対応
企業としては、どちらの制度に進んだとしても、適切な対応ができるよう、準備をする必要があります。労働審判段階での和解を目指すのか、あるいは民事訴訟で徹底的に争うのか、弁護士と相談しながら戦略を立てることが重要です。
和解交渉の可能性と交渉の進め方
不当解雇訴訟や労働審判においては、裁判所の勧告や当事者の意向により、和解による解決が図られるケースが非常に多く見られます。和解に応じるかどうかは、以下の点を総合的に考慮して検討します。
- 裁判にかかるコストと時間
- 復職を求められるリスク
- 社会的信用・風評リスク
和解金の相場としては、月給の3〜12か月分程度が目安となることが多いです。
敗訴時のリスクと判決の影響(復職・賠償)
裁判で「不当解雇」と判断され、企業が敗訴した場合、以下のような重大な影響が企業に及びます。
解雇の無効とされ、復職命令が出る
裁判所から解雇の無効が宣言された場合、企業は当該従業員を元の地位に復職させなければなりません。
解雇から判決日までの賃金支払い義務
解雇が無効とされた場合、企業は解雇された日から判決が確定するまでの期間について、その間の賃金を支払う義務を負います。
精神的損害として慰謝料が発生する可能性
不当な解雇によって従業員が精神的苦痛を被ったと認められた場合、企業は慰謝料の支払いを命じられる可能性があります。
企業に及ぼす影響
これらのリスクは、企業の運営全体に甚大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、敗訴リスクを最小限に抑えるための戦略と準備が不可欠です。
弁護士に依頼すべき理由とそのタイミング

不当解雇訴訟は専門性が高く、企業が単独で対応するには限界があります。企業法務に強い弁護士に早期に依頼することがリスクを軽減し、最善の結果を得るための鍵となります。
企業法務に強い弁護士と労働専門の違い
不当解雇で訴えられた場合には、企業側で労働問題を取り扱う経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。
労働問題に精通した弁護士は、解雇の有効性を判断する際の最新の法的基準や、裁判所の傾向、過去の類似判例などを熟知しています。
また、企業側の代理に慣れている弁護士は、労働者側の主張や戦略を予測し、それに対する適切な反論や防御策を講じることができます。和解交渉においても企業にとって有利な条件を引き出しやすい傾向があります。
弁護士が提供するサポート内容(証拠整理・交渉・訴訟代理)
弁護士は、不当解雇訴訟において多岐にわたる専門的なサポートを提供します 。特に、以下の場面で、弁護士のサポートは有効です。
- 証拠の収集・整理、主張構成のアドバイス
- 相手方との交渉、和解案の作成
- 裁判所提出書類の作成と訴訟代理
弁護士のサポートにより、企業は法的知識や交渉力、戦略構築力といった専門的な能力を補完し、訴訟対応における負担を大幅に軽減することができます。
【参考】顧問弁護士とは?顧問弁護士との契約内容の基礎知識と活用のメリット
訴訟対応は山本総合法律事務所へ

不当解雇訴訟の対応は、専門知識と経験を要する複雑なプロセスです。弁護士法人山本総合法律事務所は、企業の立場に立った実践的な支援を提供しています。
相談から依頼までの流れと準備するもの
山本総合法律事務所では、以下のような流れで企業の訴訟対応を支援しています。
初回相談
不当解雇の申し立てがなされた時点で、お早めにご相談ください。初回相談時には、事案に関連する資料をできる限りご持参いただくことで、より具体的なアドバイスが可能となります。
事案の整理と見通しのご説明
ご持参いただいた資料とヒアリングに基づき、法的な観点から今後の見通しや考えられるリスク等についてご説明いたします。
ご希望に応じて着手(交渉代理・訴訟対応)
事案の見通しや費用についてご納得いただけた場合、正式にご依頼いただき、弁護士が交渉代理や訴訟対応に着手いたします。
ご状況に合わせて対応します
弁護士法人山本総合法律事務所は、個別の状況に合わせた最善の解決策を提案することを目指しています。どうぞお気軽にご相談ください。
【参考】ハラスメント訴訟を受けた会社がまず取るべき対応・弁護士に相談する必要性について解説
不当解雇訴訟に関する費用と期間の目安

不当解雇訴訟を検討する上で、費用と期間の目安を把握しておくことは、企業の予算計画や経営判断において重要です。
弁護士費用の相場(着手金・成功報酬)
弁護士費用は、事案の複雑性や訴訟の規模によって変動しますが、一般的な目安は以下の通りです。
着手金
弁護士が案件に着手する際に支払う費用で、通常20万円〜50万円程度が相場となります。
報酬金
訴訟が和解や勝訴によって解決した場合に、得られた経済的利益に応じて発生する費用です。経済的利益の10〜15%程度が相場となることが多いです。
裁判にかかる時間の目安(労働審判:3か月、訴訟:1年〜)
不当解雇訴訟の解決にかかる期間は、選択する手続きによって大きく異なります。
労働審判では、平均して3か月程度で終了することが多いです。ただし、異議が出れば民事訴訟に移行します。
通常訴訟は長期化する傾向があり、1年〜1年半程度を要する場合が多いです。
訴訟が長期化するほど、企業の負担は増大するため、早期解決を図ることが重要です。
慰謝料・損害賠償の相場(数十万円~100万円超)
不当解雇と判断された場合に発生する慰謝料や損害賠償の相場は、事案の具体的な状況によって大きく変動します。
慰謝料の額は、解雇理由の悪質性、従業員が被った精神的苦痛の大きさなどが考慮され、一般的には30万円以上となり、100万円を超えることもあります。
また、解雇が無効と判断された場合、解雇された日から判決までの期間の賃金が未払い賃金として請求されます。
【参考】顧問契約費用
不当解雇訴訟を防ぐために企業がすべきこと

不当解雇訴訟を未然に防ぐためには、日頃からの適切な労務管理と、法的な視点を取り入れた予防策が不可欠です。
解雇前の慎重な判断と法的チェック体制
解雇は、企業にとって従業員との雇用契約を一方的に終了させる最終手段と位置づけるべきです。安易な解雇は、不当解雇訴訟のリスクを大幅に高めます。
解雇を行う前に弁護士に相談し、リスクを洗い出すことが重要です。
日常的な人事記録・指導記録の整備
不当解雇訴訟において、企業が解雇の正当性を立証するためには、客観的な証拠が不可欠です。「言った・言わない」の水掛け論を避けるためにも、日常的な記録の整備を徹底しましょう。
社内規定の見直しと労務管理体制の強化
不当解雇訴訟のリスクを根本的に低減するためには、社内規定の整備と労務管理体制の強化が不可欠です。
就業規則の整備と周知や管理職への労務研修の実施、リスクを大幅に軽減することができます。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。