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熱中症対策義務化で企業への罰則も!企業の対応策を弁護士が解説

近年、記録的な猛暑が常態化し、熱中症による健康被害が社会問題となっています。そのような中、政府は熱中症対策を「努力義務」から「法的義務」へと強化しました。

そこで、今回は、熱中症対策に関する法改正の概要から、企業が負う法的リスク、具体的な対応策、弁護士に相談するメリット等について詳しく解説します。

 

熱中症対策が義務化!企業が知らないと危ない法律改正の概要

まずは、熱中症対策に関する法律改正の内容について解説します。

 

法改正の背景(猛暑・気候変動)

日本の夏は年々厳しさを増し、熱中症による救急搬送者や死亡者が毎年多数に上っています。

政府は、このような現状を鑑み、企業における熱中症対策をより一層実効性のあるものとするため、法改正を行いました。

 

熱中症対策が「努力義務」から「法的義務」へ

これまでの労働安全衛生法においても、事業者は労働者の安全と健康を確保する義務が課されていました。しかし、熱中症対策については、具体的な措置が「努力義務」として位置づけられており、その実施は各企業の自主性に委ねられていました。

今回の法改正では、熱中症対策が明確に「法的義務」として位置づけられ、企業は具体的な対策を講じることが法的に求められることになりました。対策を怠った場合には、行政指導に加え、罰則が科されます。

 

対象となる企業や業種の具体例

今回の法改正は、業種や規模を問わず、全ての事業者に適用されます。

オフィスワーク中心の企業であっても、冷房が十分に効かない場所や、夏場の来客対応などで外出する機会がある場合など、熱中症のリスクは潜在的に存在します。

つまり、全ての企業が自社の労働環境を見直し、適切な熱中症対策を講じる義務を負うことになります。

 

対策を怠ると企業に罰則も!法的リスクを理解しよう

熱中症対策の義務化に伴い、対策を怠った企業には、これまで以上に重い法的責任が問われる可能性があります。

 

労働安全衛生法に基づく罰則内容

今回の法改正により、熱中症対策の義務化が明確化されたことで、例えば、作業環境の改善義務や健康管理義務などを怠り、労働者が熱中症を発症した場合、事業者に対しては、懲役刑や罰金刑が科されることとなりました。

具体的には、熱中症対策の実施義務に違反した者には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。法人に対しては、50万円以下の罰金が科されます。

刑事罰の対象となることで、企業経営に甚大な影響が生じる危険性があります。

 

労災認定、損害賠償請求、行政指導のリスク

労働者が熱中症により倒れた場合、労働災害として認定される可能性が高くなります。

労災認定されれば、企業は労災保険料率の引き上げや、遺族補償年金などの負担が増加する可能性があります。

さらに、熱中症を発症した労働者やその遺族から、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求訴訟を提起されるリスクも高まります。

加えて、労働基準監督署による行政指導や是正勧告を受け、企業の事業活動に制限が生じる可能性も否定できません。

熱中症対策を怠ると、企業は多大なリスクを負うこととなりました。

 

経営者の責任、企業イメージ毀損のリスク

熱中症による労災事故は、金銭的な負担だけでなく、企業の社会的信用やイメージを著しく毀損するリスクもはらんでいます。

メディアで報道されれば、ブラック企業というイメージが定着し、優秀な人材の確保が困難になる、取引先からの信頼を失う、消費者からの不買運動に繋がるなど、経営全体に悪影響が生じることとなります。

 

熱中症対策が遅れている企業が抱える3つの誤解

熱中症対策の重要性は理解しているものの、具体的な対策が遅れている企業には、いくつかの誤解が見受けられます。

 

「うちは大丈夫」は通用しない

「うちはオフィスワーク中心だから関係ない」「屋外作業はほとんどないから大丈夫」といった考えは危険です。

先に述べたとおり、空調の効きが悪い場所、換気の悪い倉庫、来客対応や営業で外出する機会がある場合など、思いもよらない場所に熱中症のリスクがあります。

また、熱中症は個人の体調やその日の気温、湿度、作業強度など、様々な要因が複合的に絡み合って発症するため、いつ、どこで起こるか予測することは困難です。

「うちは大丈夫」と油断せず、全ての労働者の労働環境を徹底的に見直すことが重要です。

 

従業員まかせでは防げない

「各自で水分補給を促しているから大丈夫」「体調が悪ければ休憩を取るように指示している」という企業も少なくありません。

しかし、従業員に任せきりの対策では、十分な効果は期待できません。特に責任感が強く無理をしがちな従業員は、熱中症の初期症状を見過ごし、重症化させてしまう可能性があります。

そのため、企業には、従業員が無理なく対策できるような仕組みを構築する責任があります。

 

一時的な対策では実効性なし

夏場だけ、あるいは熱中症警報が出た日だけ注意喚起を行うといった対策では、実効性のある熱中症対策とはいえません。熱中症対策は、年間を通じて継続的に取り組むべき課題です。

例えば、暑くなる前から従業員への教育を行い、暑さに慣れていない時期から段階的に暑熱順化を進める、空調設備の定期的な点検やメンテナンスを行うなど、長期的な視点に立って対策を講じることが大切です。

 

熱中症対策として企業が取るべき具体的な対応策

では、企業は具体的にどのような熱中症対策を講じるべきでしょうか。以下に主な対応策を挙げます。

 

1.作業環境の改善(空調・遮熱・WBGT測定)

熱中症リスクを最も効果的に低減できるのは、作業環境そのものの改善です。

具体的には、定期的に、空調設備の整備・点検を行うことや、屋外作業場や屋根、壁などに遮熱シートを設置したり、グリーンカーテンなどを利用して日差しを遮ることが必要です。

また、屋内での換気を徹底し、熱気がこもるのを防ぐことも必要です。

 

2.勤務時間・休憩体制の見直し

労働者の身体的負担を軽減するため、勤務時間や休憩体制を見直すことも有効です。

例えば、猛暑が予想される時間帯は、作業時間を短縮したり、作業を中断したり、作業を分散させるなどの工夫が必要です。

また、定期的に十分な休憩時間を確保し、クールダウンできる場所を提供することも求められます。

始業時間を早めたり、通気性の良い服装での勤務を推奨したり、クールベストなどの冷却グッズを支給することも有効です。

 

3.従業員教育と周知(初期症状の把握など)

従業員一人ひとりが熱中症に関する正しい知識を持ち、自己管理できるよう教育を徹底することも重要です。

具体的には、熱中症の初期症状(めまい、立ちくらみ、倦怠感、頭痛など)や、重症化した場合の症状、応急処置の方法について、従業員に繰り返し周知徹底することが求められます。

また、のどが渇く前にこまめに水分・塩分を摂ることの重要性を伝えたり、体調管理の前日の睡眠不足や深酒など、熱中症リスクを高める要因について注意喚起することも必要です。

気象庁の熱中症警戒アラートなどを活用し、従業員に熱中症の危険度を周知徹底することも有効といえます。

 

4.水分補給・塩分補給の体制づくり

水分や塩分の補給は、熱中症対策の基本です。

冷たい飲料水(スポーツドリンク、経口補水液など)を常備し、従業員が自由に利用できる場所や体制を整えることが求められます。

塩飴や梅干しなど、手軽に塩分を補給できるものを準備・提供することも望ましいでしょう。

 

弁護士に依頼するメリット

熱中症対策は、単に設備を整えるだけでなく、法律に基づいた適切な体制構築が求められます。このような場面で、弁護士に依頼するメリットは大きいと言えます。

 

就業規則や安全衛生管理体制の見直し提案

熱中症対策の義務化に対応するためには、就業規則や安全衛生管理規程などの社内規程を見直し、実効性のある熱中症対策を明記する必要があります。弁護士は、最新の法令や判例を踏まえ、企業の実情に合わせた就業規則や規程の作成・改定をサポートすることが可能です。

 

就業規則の見直しは山本総合法律事務所へ

熱中症対策の義務化は、企業にとって新たな法的責任とリスクをもたらします。しかし、これを機に適切な対策を講じることで、従業員の健康を守るだけでなく、持続的な企業成長にも繋がります。

弁護士法人山本総合法律事務所には、労働安全衛生法に関する豊富な知識と経験を持つ弁護士が在籍しており、企業様の熱中症対策を法的な側面からサポートすることができます。

熱中症対策にご不安を感じている経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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