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従業員からマタハラに関する相談を受けたら?企業が最低限対応すべき方法について

マタハラとは、妊娠・出産・育児を理由に不当な扱いを受けることをいいます。法律では、妊娠・出産・育児を理由に不当な扱いをすることが禁止されており、企業には、マタハラの防止や適正な措置を講じることが義務付けられています。そのため、従業員からマタハラに関する相談を受けた場合には、そのまま放置するのではなく状況に応じて適切な対応をとることが求められます。

今回は、従業員からマタハラに関する相談を受けた場合における企業がとるべき対応について、わかりやすく解説します。

マタハラに関する基礎知識

マタハラ

企業がとるべきマタハラ対策を考える前提として、まずはマタハラに関する基礎知識を押さえておきましょう。

 

マタハラの定義

マタハラとは、「マタニティハラスメント」の略称です。従業員が妊娠・出産・育児に関して、同僚や上司などから嫌がらせを受けたり、就業環境を害されることを一般的に「マタハラ」と呼びます。

マタハラというと、主に女性従業員が対象になります。しかし、男性従業員であっても育児休業制度の利用を希望したことまたは育児休業制度を取得したことを理由に不当な扱いを受けることがありますので、男性従業員もマタハラの対象に含まれます。

 

マタハラに発展する発言例

では、どのような言動が職場でのマタハラに該当するのでしょうか。以下では、マタハラに発展する可能性のある発言例を紹介します。

 

妊娠の報告に対してネガティブな反応をする

女性労働者が妊娠した場合、一定の時期に職場への報告を行うことが多いと思います。その際に以下の発言があった場合には、マタハラに該当する可能性があります。

  • 忙しい時期に妊娠なんかして迷惑になると思わないの?
  • 妊娠なんかして取引先にどう説明するんだ
  • つわりなんかで仕事を休まないでよ

 

出産や育児のための休暇の取得を認めない

女性従業員には、労働基準法により出産予定日の6週間前と出産の翌日から8週間の産前・産後休業が認められています。また、育児介護休業法では、男性および女性労働者に対して、育児休業が認められています。これらは法律上認められた労働者の権利ですので、労働者から申請があった場合には、休暇の取得を認めなければならず、それを拒否するとマタハラに該当します。

また、出産や育児のための休暇取得にあたって、以下のような発言があった場合には、マタハラに該当する可能性があります。

  • 育休をとることでほかの人の負担が増えることを忘れないでね
  • 男のくせに育休をとるのはおかしい
  • 女は子どもを理由に休めていいよな

 

妊娠、出産、育児を理由に退職などを迫られる

妊娠、出産、育児を理由に解雇、減給、降格、異動などの不利益取り扱いをすることは、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法により禁止されています。

そのため、妊娠、出産、育児などを理由として、以下のような発言があった場合には、マタハラに該当する可能性があります。

  • 産前産後休業、育児休業の取得を希望したときに「戦力にならないから辞めた方がいいよ」と言われた
  • 「子育てしながら働くのは子どもがかわいそうだ」と言われ、退職を迫られた
  • 「妊娠、出産、育児で仕事を休む人には大事な仕事は任せられない」と言われ、不当な配置転換をされた

 

従業員からマタハラの相談をされたら?企業が対応すべきこと

企業ができること

 

従業員からマタハラの相談をされた場合、企業としては、どのような対応をすべきなのでしょうか。

 

従業員との面談

従業員からマタハラの相談があった場合、企業としては、まずは事実関係を確認する必要があります。マタハラの被害者と面談を行い、具体的な事実関係の把握を行います。その際には、被害者の主張だけではなく、それを裏付ける客観的な証拠があるかどうかも調査することが大切です。マタハラの証拠になるもとしては、以下のものが挙げられます。

  • マタハラ発言を録音した音声データ
  • マタハラ発言があったメールやLINEの履歴
  • マタハラ被害を記録したメモやノート

また、同じ職場で働く同僚の証言もマタハラを立証する証拠になりますので、同僚からも事実関係のヒアリングを行うとよいでしょう。ただし、マタハラ被害の事実が職場内で拡散されることがないように、個人情報の扱いについては細心の注意が必要になります。

 

ハラスメント行為のあった従業員との面談

マタハラの事実認定は、マタハラ被害者からの言い分だけでなくマタハラ加害者側の言い分も聞いたうえで判断する必要があります。マタハラ加害者との面談では、被害者からの申告内容について、一つずつ事実確認を行ってきます。

被害者と加害者の言い分が異なるようであれば、再度双方からヒアリングすることも検討する必要があります。

なお、マタハラ被害者からハラスメントの申告があった場合には、トラブル防止の観点から被害者と加害者を隔離することが大切です。マタハラ調査中に引き続き加害者からハラスメント行為があるようであれば、会社の安全配慮義務違反を理由に被害者から訴えられるリスクもありますので注意が必要です。すぐに配属先を変えることが難しい場合には、被害者または加害者を自宅待機とすることも検討しましょう。

 

【参考】パワハラ防止法による法改正の内容とは?経営者が知っておくべき基礎知識

 

適切な対応方法に関する方針確定

マタハラの当事者および関係者からのヒアリングを終えた段階で、マタハラの有無についての事実認定とハラスメント該当性の判断を行います。お互いの認識が一致している場合であればよいですが、お互いの言い分が食い違う場合には、慎重に事実認定を行うことが大切です。当事者の言い分だけではなく、客観的な証拠との整合性を踏まえて事実認定を行うようにしましょう。

 

調査報告書の作成

調査報告書は、必ず作成しなければならないものではありませんが、今後の加害者への懲戒処分をする際の根拠資料になりますし、再発防止策を検討する際にも重要な資料になりますので、できる限り作成しておくべきでしょう。

調査報告書には、主に以下のような項目を記載します。

  • 調査の結論
  • 当事者や調査担当者
  • 調査に至る経緯
  • 調査対象事項
  • 調査内容
  • 調査の基礎とした資料
  • 認定事実
  • 事実認定をした理由
  • 認定した事実についてのハラスメント該当性

 

ハラスメント問題を起こさないためには?

マタハラ防止

 

企業には、マタハラをはじめとしたハラスメントを防止するために必要な措置を講じることが義務付けられています。ハラスメント問題を起こさないようにするためには、以下のような対策が必要です。

 

ハラスメント相談窓口の設置

職場におけるハラスメント問題を早期に発見するためには、ハラスメント相談窓口を設置することが有効です。法律上もハラスメント相談窓口の設置が義務付けられていますので、まだ相談窓口を設置していないという企業では、早めに設置を進めるようにしましょう。

なお、ハラスメント相談窓口を形式的に設けているだけでは意味がありませんので、ハラスメント窓口を設置した場合、従業員に周知することが大切です。また、面談相談だけでは、相談を躊躇してしまう従業員もいますので、電話やメールなど複数の手段で相談を受けられるようにするとよいでしょう。

【参考】社外にハラスメント相談窓口を設置するメリット|ハラスメントの相談は弁護士へ

 

従業員向け研修の実施

マタハラをはじめとしたハラスメントは、従業員のハラスメントに対する意識が低いことが原因で生じるケースが多いです。職場内でのハラスメントは重大な問題であることを従業員に理解させるためにも、従業員向け研修を実施しましょう。

従業員向け研修は、定期的に実施するのはもちろんのこと、職場内でハラスメントに関する調査を行い、ハラスメントの実態を踏まえた研修を行うのが有効です。

また、ハラスメント相談窓口の担当者の対応次第では、問題がこじれてしまうことがあります。そのような事態を防ぐには、相談対応の仕方やカウンセリングの手法などの相談担当者向け研修を実施することも有効な対策となります。

【参考】セクハラが発生した際に企業がとるべき対応について|労務問題に精通した弁護士が解説
【参考】問題社員は解雇できる?企業経営者が知っておくべき解雇に関する基礎知識

 

課題が発生する前の事前の対策

ハラスメントの問題が生じてからでは、企業がハラスメントの被害者から損害賠償請求をされるリスクがありますので、ハラスメント問題が発生する前にハラスメントの原因や背景要因を解消することが重要になります。そのために必要な対策としては、以下のような対策が挙げられます。

  • 定期的なハラスメントチェックの実施
  • 従業員への業務の偏りを軽減するための業務配分の見直し
  • 従業員同士のコミュニケーションの充実
  • 再発防止策の検討

 

ハラスメント対策に関するご相談は弁護士へ

集合写真

 

ハラスメント対策に関するご相談は、弁護士に相談することをおすすめします。

 

企業がとるべき具体的な対策をアドバイスできる

企業が講じるべきハラスメント対策は、企業の規模や業種によってさまざまですので、企業の実情に応じた対策を選択して、実施することが大切です。そのためには、専門家である弁護士に相談をして、具体的なアドバイスをしてもらうのがよいでしょう。

企業法務に詳しい弁護士であれば、企業の規模や業種に応じた最適なハラスメント対策を提案してもらうことができます。

 

外部相談窓口を委託できる

ハラスメント相談窓口を設置する場合には、社内の相談窓口だけでなく、外部相談窓口の設置も検討する必要があります。社内の相談窓口だと、ハラスメント被害者が相談を躊躇してしまうことがあり、被害の発見が遅れてしまう可能性があるからです。

法律の専門家である弁護士であれば外部相談窓口として適任といえますし、守秘義務がありますので、従業員としても安心して相談を行うことができるでしょう。

 

ハラスメント対応を任せることができる

ハラスメントがあったと認定された場合には、加害者である従業員に対して、懲戒処分などを検討する必要があります。しかし、懲戒処分は、従業員に対する不利益処分になりますので、厳格な要件を満たしていないものについては、無効と判断されるリスクがあります。

そのようなリスクを回避するためにも、まずは弁護士に相談して、懲戒処分の有効性や必要な手続きについてアドバイスしてもらうとよいでしょう。

また、ハラスメント被害を受けた従業員から訴えられた場合も、交渉や訴訟対応などを弁護士に任せることができます。

 

まとめ

企業には、マタハラをはじめとしたハラスメント問題に対して、必要な対策を講じる法的な義務があります。ハラスメント問題を放置して、従業員に被害が生じた場合には、従業員から損害賠償請求をされるリスクもありますので、しっかりと対策を講じることが大切です。そのためには、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要になりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

群馬の山本総合法律事務所では、企業のハラスメント問題の解決に積極的に取り組んでいます。ハラスメント問題に対応できる弁護士をお探しの経営者の方は、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。

 

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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