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次の悩みを抱えていませんか?
- 取引先からの支払が遅れている
- 「支払期限を延ばして欲しい」と告げられた
- 相手と連絡すらつかない
支払ってもらえない原因が取引先の資金不足であれば、早めに債権回収をしないと支払を受けられないリスクがあります。
債権回収の方法には、大きく分けると、交渉と法的手段があります。ベストな方法はケースバイケースであり、状況に応じて方針を決定しなければなりません。
債権回収がうまくいかないと、金額によっては自社の経営にも影響が生じてしまいます。早めの対応が肝心です。
この記事では、債権回収の方法と注意点について解説しています。相手から金銭を支払ってもらえずにお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
債権回収の進め方
債権回収には、交渉により支払を促す方法と、訴訟などの法的手段を利用して支払わせる方法があります。最初に交渉を進め、交渉では解決が困難な場合に法的手段を検討するのが一般的です。
そこで、まずは、交渉による債権回収の進め方について解説します。
債権の存在の確認
最初に、そもそも債権が存在しているかを確認してください。
債権とは、相手方に対して法律上何らかの行為をするよう請求できる権利です。債権回収の場面では、金銭の支払を請求する権利(金銭債権)の存否が問題となります。債権が発生し、現在行使できる状態になければ、債権回収を進めることはできません。
債権の存在を確認するにあたっては、特に契約内容と消滅時効に注意してください。順に解説します。
契約内容
相手方との契約をチェックして、債権の中身を確認しましょう。不法行為など、契約がなくても債権が発生するケースもありますが、債権回収の場面では当事者間に何らかの契約があるのが通常です。
契約書がある場合には、契約書の記載を確認します。特に以下のポイントに注意してください。
- 請求できる金額
売買代金、請負報酬など、金額に関する定めは必ず確認しましょう。
- 支払期限
当然ですが、支払期限が到来していなければ請求できません。期限に条件がつけられているときには、条件を満たしている必要があります。
- 支払方法
一括か分割か、分割のときは一回あたりの金額や支払回数をチェックしてください。
- 期限の利益喪失条項
分割払いのときに「支払を怠った際に残額をすべて請求できる」とする定めを「期限の利益喪失条項」といいます。期限の利益喪失条項があれば、期限が到来していない部分についても請求が可能です。
- 担保に関する定め
担保物権(抵当権など)や保証人がついているかも確認してください。債権回収にあたっては重要な情報です。
- 裁判管轄
法的手段の利用を見すえて、裁判管轄に関する定めもチェックしておきましょう。
契約書があれば、まずは以上の点を中心に確認します。「契約書」という名称の書面がないときには、発注書など他の書類をチェックしてください。
書類が一切なくても契約が成立するケースはあるものの、裁判所に契約の存在を証明するハードルが高くなってしまいます。継続的な取引で書面を発行していない場合には、債権の内容をまとめておくなどの対策が必要です。
消滅時効
債権が発生していたとしても、放置していて消滅時効期間を経過していれば、請求できなくなってしまいます。
債権の消滅時効については、以下の定めがあります。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
「権利を行使することができることを知った時から5年」と「権利を行使することができる時から10年」のいずれかの期間を経過すると、債権は時効により消滅します。時効期間が迫っているときには、裁判を起こすなどして、消滅時効の完成を阻止しなければなりません。
なお、上記の消滅時効期間のルールは、改正民法が施行された2020年4月1日以降に発生した債権に関するものです。2020年3月31日以前に発生した債権については、原則として「権利を行使することができる時から10年」となります。
もっとも、改正前には、債権の種類によって10年より短い期間で消滅するルールがありました。以下の債権については、既に時効期間が経過している可能性があります。該当していて消滅時効にかかっていないかチェックしておきましょう。
消滅時効期間 | 債権の種類(主なもの) |
1年 | 運送賃に係る債権
飲食料、宿泊料に係る債権 |
2年 | 生産者、卸売商人、小売商人の売掛代金債権 |
3年 | 工事の設計、施工、監理を業とする者の工事に関する債権 |
5年 | 商行為によって生じた債権 |
取引先の状況の確認
債権が存在していて請求できるとわかったら、取引先が支払をしない理由や支払能力に関する情報を確認しましょう。
支払をしない理由
支払をしない理由は色々と想定できます。
- 資金繰りに問題がある
まず思いつくのは、経営難による資金不足で支払能力がないケースでしょう。「払いたくても払えない」状況です。放置していると他の債権者に先取りされてしまうため、早めに行動する必要があります。
- 対応に不満がある
こちらが提供した製品に問題がある場合など、契約にしたがって対応していないことを理由に支払を拒絶するケースも考えられます。支払能力がない場合とは争いのポイントが変わるため、自社の対応に問題がないかを確認しなければなりません。
- 忘れている
単に支払を忘れているだけの可能性もあります。この場合、相手方に問い合わせればすぐに支払をしてもらえるはずです。
契約が存在しないと考えているなど、他にも支払を拒絶する理由は考えられます。理由によって今後の対応が変わってくるため、確認しておきましょう。
以下では、資金不足が理由であったケースを念頭において解説します。
支払能力や財産に関する情報
支払わない原因が資金不足にあった場合には、支払能力や財産に関する情報を集めましょう。いくら法律上債権が存在していても、取引先にお金がなければ実際には回収できません。支払可能性について見通しをつけるためには、情報が必要になります。
知っておくべき情報としては、以下が挙げられます。
- 他の支払も遅れているか
他の取引先、金融機関、税金など、他に支払の遅延があるかを確認してください。自社以外にも延滞しているのであれば、事態はより切迫しています。特に税金を滞納している場合には、税務署に先に回収されてしまう可能性が高く、注意が必要です。
- 事業は順調か
取引先の事業の状況を知っておくことも不可欠です。事業がうまく進んでいない、あるいは一切していない場合には、今後資金を稼げず、支払が難しくなります。
- 換価できる財産はあるか
めぼしい財産があるかの確認も必須です。資金がなく、今後も得るのが難しいときには、保有財産から回収するしかありません。
代表的な財産としては、不動産(土地・建物)、動産(自動車など)、債権(預貯金・売掛金など)があります。不動産登記事項証明書などの資料の取得、現地調査、聞き込みにより、財産のありかと価値を調査しましょう。
以上の多くは取引先の内部事情であり、十分に把握できなくても仕方がありません。可能な範囲で情報を集めるようにしてください。
債権回収に向けた方針決定
取引先の状況を把握できたら、債権回収に向けて方針を決定しましょう。
債権回収には、大きく分けて、交渉による方法と法的手段による方法があります。
まずは交渉による回収を試みて、うまくいかない場合に法的手段に移行するのが基本的な流れになります。訴訟などの法的手段は時間や手間を要するのに対し、交渉であれば手間をかけずに早期の回収が可能なためです。
特に、資金不足が一時的であり、支払の見込みが立つ場合には、交渉の余地が大きいです。法的手段をとるとかえって相手方の信用不安が高まり、回収できなくなるリスクがあります。交渉での回収を試みるのがよいでしょう。
もっとも、最初から法的手段をとるべき場合もあります。たとえば以下のケースです。
- 相手方が支払の意思を一切見せていない
- 既に資産の売却を始めている
まずは交渉が基本ですが、支払の見込みがなく時間の経過により回収が難しくなると想定されるときには、法的手段を早めに検討してください。
支払に関する交渉
交渉する際の流れや注意すべき点をまとめました。
内容証明郵便の送付
交渉においては、メール・電話などによる催促に効果がなければ、配達証明付きの内容証明郵便を送付するのが一般的です。
内容証明郵便とは、差し出した文書の内容を証明できる郵便です。「いつ」「誰が誰に」「どういった内容の」文書を送ったかを証明できます。消滅時効が近い場合には、6ヵ月間は時効の完成を猶予できる点でも効果的です(民法150条1項)。
内容証明郵便には、以下の事項を記載してください。
- 請求する債権の中身(金額や根拠)
- 支払を求める意思
- 支払期限
- 振込先の口座番号
- 支払がなければ法的手段をとること
内容証明郵便を送るだけで、相手が心理的プレッシャーを感じて自発的に支払うケースもあります。
交渉の内容
相手が即時に一括で支払うのが困難であれば、期限延長、分割払い、一部免除などの交渉をします。支払がなされなかった場合に備えて、不動産を担保にとったり、保証人をつけたりする交渉も行うとよいでしょう。
他にも場合によっては、相手が自社に対して有している債権と相殺する、金銭以外で代物弁済を受けるといった方法も考えられます。
相手が誠実に話し合わない、譲歩可能な条件が提示されないといった場合には、交渉を打ち切らざるを得ません。必要以上に長引かせると法的手段への着手が遅れてしまい、回収の可能性が下がってしまいます。
なお、話し合いが進まないからといって、勝手に相手方の財産を持ち出したり、脅迫したりすれば違法です。冷静に振る舞うようにしてください。
交渉結果についての書面作成
交渉がまとまったら、合意内容を書面にしてください。書面があれば、後のトラブルを防げるとともに、トラブルが生じた際の証拠にもなります。
書面作成時の注意点
書面作成の際には、以下の点に注意してください。
- 債務を特定する
誰が誰に対して、いくらの債務を負ってるのかを明確にしましょう。
- 支払方法を明記する
金銭の支払時期、支払方法などを明記します。特に重要な部分なので、間違いがないようにしてください。
- 期限の利益喪失条項を設ける
分割払いの場合「期限の利益喪失条項」を設けてください。期限の利益喪失条項とは、「支払を怠った場合には残債務をただちに一括で支払う」ことを定める条項です。期限の利益喪失条項がないと、期限が到来していない分は請求できません。忘れないようにしましょう。
他にも、保証人をつける場合には書面に明記する必要があるなど、注意すべき点は数多くあります。間違いがないように、弁護士のチェックを受けるのも有効な方法です。
公正証書・即決和解
自分たちで作成した合意書面があったとしても、相手が守らないときには、まず訴訟を提起して勝訴判決を得なければなりません。訴訟を経ずに強制執行(差押え)には進めないため、回収まで時間や手間を要してしまいます。
そこで、あらかじめ合意書面を公正証書で作成しておく方法もあります。公証役場で作成した公正証書に「強制執行を受け入れる」旨の文言があれば、訴訟を提起せずに直接強制執行に進むことが可能です。
ただし、公正証書で強制執行が可能なのは金銭債権に限られ、不動産の明渡しなどはできません。金銭債権以外についても訴訟をせずにすませるには、簡易裁判所で「訴え提起前の和解(即決和解)」をする方法があります。
通常の合意書面では不安が残る場合には、公正証書や即決和解の利用も検討してみましょう。
債権回収を行う方法
交渉での解決が難しい場合には、より強力な手段も検討します。法的手段をとる場合には、手続が非常に面倒であるため、弁護士に依頼して進める必要性が高いです。
弁護士をつけた債権回収においては、状況に応じて以下の方法を用います。
弁護士名義での内容証明郵便
弁護士に依頼したからといって、必ずしも即座に裁判所を利用した手続をするわけではありません。まずは、弁護士名義で内容証明郵便を送付するのが一般的です。
弁護士の名前が入っていると、会社名の場合に比べて、相手がプレッシャーを感じて支払をする可能性が高まります。もっとも、感情を害して関係を悪化させるリスクもゼロではありません。状況に応じて、会社名で送る、最初は電話で催促するといった対応も可能です。
内容証明郵便を送付して交渉しても解決しない場合には、裁判所を利用した手続をとります。
民事調停手続
裁判所を利用した債権回収の方法のひとつとして、簡易裁判所での民事調停手続があります。民事調停とは、調停委員を間に挟んで裁判所で行う話し合いです。
当事者同士では話合いが進まなくても、第三者がいると冷静になれるケースがあるため、民事調停も選択肢になり得ます。話合いであるため、当事者が合意できれば訴訟の判決ではできない柔軟な解決も可能です。合意内容は調停調書にまとめられ、判決と同様の法的効力を持ちます。
もっとも、民事調停はあくまで話合いです。合意が難しいケースや、そもそも相手が出席しないケースには、適していません。
支払督促手続
通常訴訟より簡易な方法として、支払督促手続もあります。支払督促手続では、簡易裁判所に申立てをして、債務者に対する支払の督促をしてもらい、債務者から異議がなければ通常訴訟を経ずに強制執行に進むことが可能です。
支払督促手続は書面審査ですみ、通常訴訟に比べて手間がかからないメリットがあります。しかし、債務者から異議が出れば通常訴訟に移行し、かえって時間を要してしまいます。
支払督促手続は債権の存在に争いがなく、相手方が異議を出さないと想定されるケースでは有用な方法です。
訴訟対応
債権回収の際の法的手段としては、通常訴訟が一般的です。訴訟で自社の主張が認められて勝訴判決を得れば、強制執行に進めます。相手方が出席しない場合でも、欠席判決を出してもらえます。
通常訴訟のデメリットは、長引きやすい点です。もっとも実務上は、判決に至る前に和解で決着するケースも少なくありません。和解調書には判決と同様の効力があり、相手が合意を守らないときには強制執行ができます。
また、60万円以下の金銭の支払を求める場合には、少額訴訟の利用も可能です。少額訴訟は原則として1回の期日で判決まで出してもらえるため、通常訴訟に比べて時間を短縮できます。ただし、相手方が求めると通常訴訟に移行します。
仮差押え
訴訟をする前に、金銭債権を保全するための仮差押えを検討する必要があります。
訴訟をしても、強制執行までの間に相手方が保有財産を処分すれば、実際には金銭を回収できません。そうなれば勝訴判決を得ても意味がなくなり、かけた時間や費用が無駄になってしまうのです。
訴訟をする前に裁判所に申立てをして仮差押えをしておけば、対象財産は凍結され、債務者が勝手に処分できなくなります。仮差押えの対象としては、不動産、預金、売掛金などが考えられます。訴訟で勝訴判決を得た後に相手が支払をしなければ、仮差押えをした財産からの回収が可能です。
仮差押えの実行によって、困った相手方が支払をするケースもあり、有効な手段です。ただし、仮差押えの際には担保の提供が必要となる点には注意してください。
強制執行
法的手続を経て決まったのに相手が支払をしないときには、強制執行が必要です。強制執行では、相手が有する不動産、動産、債権を差し押さえます。不動産・動産の換金や、預金・売掛金の取り立てにより、債権回収が可能です。
確定判決、調停調書、和解調書などの「債務名義」があれば、強制執行に進めます。相手が支払を拒み続けても、最終的には強制執行により債権を回収できるのです。
【参考】債権回収業務について
群馬で債権回収に関するご相談は弁護士法人山本総合法律事務所へ
ここまで、債権回収について、交渉の進め方や法的手段の選択肢について解説してきました。
まずは交渉によって回収を目指すのが基本ですが、難しい場合には裁判所を利用した手続に進みます。訴訟が中心になりますが、状況に応じて他の方法の検討も必要です。
群馬で債権回収にお悩みの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。
当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、地元企業から債権回収に関する数多くの相談を受けて参りました。ご依頼いただければ、適切な債権回収の方法を検討したうえで、皆様に代わって交渉や法的手続を迅速に進めます。
弁護士が入ることで交渉が前に進むケースがよくあります。相手が支払を拒絶しても面倒な法的手続はお任せいただけるため、他の業務への影響を最小限に抑えることが可能です。
債権回収では、早めの対応が肝心になります。群馬県内で債権回収にお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。