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弁護士が解説!知っておくべき立退き交渉の3つのポイント

マンションの外観不動産を貸していて、次の悩みを抱えていませんか?

  • 貸している建物を自分たちで使いたくなった
  • 老朽化した建物を建て替えるために借主に出ていってもらいたい
  • 家賃を支払わない賃借人を退去させたい

 

これらのケースでは「できる限り早く立ち退いて欲しい」とお考えになるでしょう。しかし、法律上、賃借人の立場は手厚く保護されており、そう簡単には退去させられません。

そこで選択肢になるのが立退き交渉です。立退き交渉に成功すれば、裁判など面倒な手続きを経なくても円満に解決できます。ただし、立退料を用意すべきケースも多い点には注意してください。

本記事では、

  • 立退き交渉において立退料が必要なケース
  • 立退き交渉を始める前に確認すべきこと
  • 立退き交渉を行う際の3つのポイント

 

などについて解説しています。

借主に立退きを求めたいオーナーの方にとって役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

 

立退き交渉の類型

不動産「借主に出ていって欲しい」と考えていても、裁判所での手続きを経ずに、貸主側が強引に立ち退かせることはできません。とはいえ、裁判所に訴訟を起こすなどすれば時間や手間がかかってしまいます。そこで有効なのが立退き交渉です。

立退き交渉とは、貸主が借主に対してする、物件から退去してもらうための交渉です。

立退き交渉が必要になる場面には、大きく分けて以下の2つの類型があります。

  • 貸主側の都合により立退きを求めたい場合
  • 借主側に問題があり立退きを求めたい場合

 

2つの類型について、順に解説します。

ケース①:老朽化による建て替え等の貸主側の都合による交渉

まずは、貸主側の都合により立退きを求めるケースです。

たとえば、以下の事例が考えられます。

  • より収益性の高い建物に建て替えたい
  • 老朽化のため建物を取り壊したい
  • 自分たちで建物を使いたい
  • 高い賃料を支払ってくれる第三者に貸したい

 

借主に問題がないのに立退きを求める場合、ハードルは高くなります。相応の立退料が必要になるとお考えください。

ケース②:家賃滞納等の契約違反で賃借人に問題があるときの交渉

もうひとつは、借主の側に何らかの契約違反があって立退きを要求するケースです。

たとえば以下の事例が考えられます。

  • 長期間にわたって家賃を滞納している
  • 無断で第三者に転貸した
  • 契約上の使用目的とかけ離れた用途で建物を使っていた

 

借主に非がある以上、基本的には立退料を支払う必要はありません。しかし、契約違反の程度が軽い場合などでは、立退料を支払うケースもあります。

 

立退き交渉時の立退料の必要性

金銭立退き交渉の際には、立退料の支払いが必要なケースがあります。立退料とは、退去してもらう代わりに、貸主から借主へと支払われる金銭です。

そもそも、建物賃貸借契約を賃貸人の側から解約したり、更新を拒絶したりするためには「正当な理由」が必要です。借地借家法28条に以下の定めがあります。

借地借家法28条

建物の賃貸人による第26条第1項の通知(注:更新拒絶の通知のこと)又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

条文によると、建物賃貸借契約の更新拒絶や解約申入れのためには、以下の①から⑤の事情を考慮して「正当な理由」が認められなければなりません。

①賃貸人と賃借人が建物の使用を必要とする事情

②建物の賃貸借に関する従前の経過

③建物の利用状況

④建物の現況

⑤建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出

⑤の「財産上の給付」を一般的に立退料と呼んでいます。

条文上、立退料は「正当な理由」があるかを判断する1つの要素と位置づけられています。

では、実際に立退料が必要なのはどういったケースなのでしょうか?

 

立退料が必要なケース

立退料が必要なのは「建て替えたい」「自分が住みたい」など、貸主の都合で退去を求めるケースです。

上述の通り、貸主からの更新拒絶や解約申入れのためには「正当な理由」が要求されます。「正当な理由」があるかを判断する際に最も重視されるのは、当事者が「建物の使用を必要とする事情」です。

双方の事情を比較して判断されますが、通常、借主については住居・店舗・事務所などとして使用する必要性があるでしょう。借主が建物を追い出されると、引越し代、新居の初期費用、新たな出店先を見つけるまでの営業損害など、様々な経済的な負担が発生します。

したがって、単に「貸主も建物を使いたい」というだけでは、「正当な理由」は認められません。

そこで重要になるのが立退料です。退去によって借主に生じる経済的な不利益を、立退料の支払いにより補てんできれば「正当な理由」が認められやすくなります。

貸主が建物を使用する必要性が十分でない場合に、立退料が「正当な理由」を補完する役割を担うのです。

 

立退料の支払いが不要となる可能性があるケース

立退料の支払いが不要なケースとしては以下が考えられます。

  • 借主に重大な契約違反(債務不履行)があった
  • 定期建物賃貸借契約であった
  • 立退料がなくても「正当な理由」が認められる

 

まず、借主に重大な契約違反があるときには、立退料を支払う必要はありません。借主に契約違反があれば「債務不履行」として、契約を解除できるためです。債務不履行の場合、借地借家法28条は適用されないため「正当な理由」の有無は無関係です。

ただし、債務不履行で契約を解除するハードルは高いとお考えください。判例上、賃貸借契約においては「当事者の信頼関係が破壊された」といえる事情がなければ、解除は認められていません。

たとえば、家賃を1ヶ月滞納しただけでは、基本的に解除は認められません。すぐに立ち退いて欲しいのであれば、交渉により立退料を支払わなければならない可能性があります。

 

次に立退料の支払いが不要なケースとしては、定期建物賃貸借契約であった場合が挙げられます。定期建物賃貸借契約とは、期間が定められていて更新が予定されていない賃貸借契約です(借地借家法38条)。契約期間が過ぎれば更新されずに契約が終了するため、立退料を支払わずに退去してもらえます。

 

最後に、立退料を支払わなくても借地借家法28条の「正当な理由」が認められるケースです。立退料の支払いは、更新拒絶や解約申入れの「正当な理由」の有無を判断する1つの要素に過ぎません。したがって、立退料がなくても他の理由により「正当な理由」が認められる場合はあります。

たとえば、建物が老朽化していて倒壊寸前の場合には、立退料なしで更新拒絶や解約申入れが認められる可能性があります。

 

 

立退き交渉を始める前に確認すべきこと

チェックリスト実際に立退き交渉を始めると、予想外に時間や費用を要してしまう可能性があります。
先に以下の点を確認してから、交渉に臨むようにしてください。

立退料の必要の有無

まずは、立退料が必要かを判断しましょう。

上述の通り、貸主側の都合による立退き交渉の場合には、基本的に立退料が必要です。借主に問題がある場合には不要な可能性が高いですが、契約違反の程度が重いかどうか見極めて判断しなければなりません。

 

立退きを依頼する場合の費用の相場

交渉に際して立退料が必要な場合には、費用の相場を把握しましょう。

立退料に明確な計算方法はありません。居住用か事業用かで考慮する要素が異なります。

 

居住用建物の場合、以下の費用を合計した金額が目安になります。

  • 引越し費用
  • 新居への初期費用(敷金、礼金、不動産会社の仲介手数料など)
  • 新居との家賃の差額(2年など一定期間分)

 

具体的な金額はケースバイケースですが、家賃の6ヶ月分がひとつの目安になるでしょう。

 

事業用建物の場合には、居住用に比べて立退料が高くなる傾向にあります。特にお店は立地が重要であるため、オフィスよりも高額になりやすいです。具体的には、以下の費用を参考にしてください。

  • 引越し費用
  • 移転先の初期費用(敷金、礼金、不動産会社の仲介手数料など)
  • 移転先との賃料の差額(2年など一定期間分)
  • 移転先で営業するための費用(内装費、広告費など)
  • 休業による損失
  • 移転による減収

以上はあくまで目安であり、立退きの理由にもよるため、妥当な金額はケースによって大きく変わります。より正確に把握したい場合には、専門家に相談しましょう。

 

次回の更新時期での立退き実施が可能かどうか

契約期間の定めがある建物賃貸借契約の場合には、更新拒絶の通知は期間満了の「1年前から6ヶ月前」までの間にするものとされています(借地借家法26条1項)。過ぎてしまえば、裁判をしても次の更新には間に合わず、強制的な立退きが実施できなくなってしまいます。

更新まで6ヶ月を切っていても、交渉がまとまれば立退きは可能です。しかし交渉が難航すれば、さらに次の更新まで待たなければならず、結果的に立退きの時期が遅くなってしまいます。

事前に更新時期を確認して、できるだけ早めに交渉を始めるようにしてください。

 

立退き交渉を行う際の3つのポイント

交渉実際の交渉にあたっては、以下の3つのポイントに気をつけましょう。

立退きを求める「正当な理由」の確認

貸主の都合で立退きを求めるのであれば理由を説明し、相手の事情も確認してください。

上述の通り、「正当な理由」の有無は以下の要素から総合的に判断されます。

①賃貸人と賃借人が建物の使用を必要とする事情

②建物の賃貸借に関する従前の経過

③建物の利用状況

④建物の現況

⑤建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出

 

最も重要なのは、①の「建物の使用を必要とする事情」です。貸主側に必要性が認められなければ、いくら高額な立退料を支払っても「正当な理由」は認められません。

お願いする立場である以上、貸主側の事情を丁寧に説明するのは当然です。しかし、貸主側の理由だけを説明しても、納得を得られるとは限りません。相手がその場所で居住・営業する必要がある理由にも耳を傾けて、移転先も含めて互いが合意可能な提案をするよう心がけてください。

 

具体的な立退き時期・立退料に関する提示

交渉の際には、貸主側から立退き時期や立退料を提示しましょう。

立退きが決まっても準備に時間がかかるため、借主に配慮して立退きまでは一定の期間を置くようにしてください。目安としては3~6ヶ月程度です。

立退料は、事情に応じて算出して提示してください。あまりに低い金額だと借主が感情を害するおそれがあります。とはいえ、一度出した金額を下げるのは困難です。高すぎも低すぎもしない適切な金額を示さなければなりません。

条件を提示する際には、口頭ではなく文書でするようにしましょう。記録に残り、相手としても検討しやすいはずです。

あくまで任意の交渉なので、強引な印象を与えないように言葉遣いに注意してください。

 

交渉がうまくいかない場合の代替案

交渉で立退きがまとまらない場合には、裁判で争うのが一般的です。

最終的には「正当な理由」があるかが問題になるため、正当な理由の根拠となる証拠を集めて裁判所に提出してください。立退料の金額が重要になるケースも多いので、裁判官の反応も見つつ、妥当な金額を示す必要があります。

交渉の段階でも、裁判まで見すえて進めるようにしましょう。

 

群馬で立退き交渉に関するご依頼は弁護士法人山本総合法律事務所へ

武多和弁護士ここまで、立退き交渉について、立退料が必要なケースや交渉のポイントなどを解説してきました。
貸主側の都合で立退き交渉をする際には、基本的に立退料が必要となります。適切な金額を提示して、借主に配慮しつつ交渉を進めなければなりません。交渉がまとまらなければ、訴訟になる可能性もあります。

群馬で立退き交渉にお困りの方は、弁護士法人山本総合法律事務所までご相談ください。
当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、不動産に関する数多くの相談を受けて参りました。

当事務所の弁護士に交渉をご依頼いただければ、経験を元に事情に応じて妥当な立退料を提示いたします。借主に言われるがまま高額の支払いを強いられることはありません。
弁護士が入れば、借主も冷静になり、交渉がスムーズに進むケースがよくあります。もし交渉でまとまらなかったとしても、訴訟など法的手段はお任せください。

群馬県内で立退き交渉にお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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