2026/05/19

契約書は、取引先や顧客との合意内容を文書として記録し、その内容を明確化して法的な効力を持たせるための重要な書類です。
「それなりに形式を整えて署名・押印しておけばいいだろう」
「ひな形を使えば問題ないだろう」
このように考えている方も多いようですが、契約書の記載内容や作成方法によっては、十分な法的効力が認められなかったり、思わぬトラブルを招いて自社に重大な損失をもたらしたりするおそれがあるので、注意が必要です。
この記事では、契約書の法的効力について詳しく解説するとともに、契約書を作成する際に注意すべきポイントもご紹介します。
目次

まずは、契約書に関する基礎的なことをご説明した上で、その法的効力を明らかにしていきます。
そもそも「契約」とは、当事者双方の合意によって成立し、法的な権利・義務を発生させる約束のことです。
例えば、売買契約が成立すると、売主には代金を受け取る権利と目的物を引き渡す義務が生じ、買主には目的物を受け取る権利と代金を支払う義務が生じます。
このような約束の内容を記載した文書が「契約書」です。
契約は、一部の種類を除いて口約束だけで成立します。
しかし、契約書は以下のようにビジネス上の重要な機能を有するため、現在の企業社会において取引をする際には、原則的に契約書を作成すべきものと考えられています。
契約書を作成しておかなければ、当事者双方の認識のズレを是正する機会が乏しいため、後から「そんなつもりではなかった」というトラブルが発生しがちです。
このようなトラブルが発生すると、どちらも自社の主張が正しいことを証明できる証拠がないことも多く、「言った・言わない」の争いがいつまでも続くことになりかねません。
これでは、取引を円滑に進めることが困難となっています。
契約書を作成しておけば、後日の紛争を未然に防止し、取引の円滑化につながります。
契約書の法的効力は、「合意があったことと、合意内容を証明する文書になる」という点にあります。
さらにいえば、当事者間のトラブルが裁判に発展した場合に、有力な証拠として使用できるという効力があるのです。
契約によって、当事者間には権利と義務が発生し、その合意内容を一方的に変更・解除することはできないという法的拘束力が生じます。
この効力は「契約」が成立したことによるものであって、「契約書」の作成によって発生する法的効力とはいえません。
しかし、裁判となれば、契約書を証拠として提出することで、合意した事実と、合意内容を容易に証明することができます。
相手方が「そんな合意はしていない」「話が違う」などと主張する場合には、相手方において、その主張が正しいことを裏づける証拠を提出しない限り、契約書に記載された内容のとおりに合意したものとみなされるのです。
このように、裁判に発展した場合には、証拠としての法的効力を持つ契約書が重要な役割を果たすことになります。

近年では、ビジネス文書や公文書のペーパーレス化に伴い、従来の紙を使用した契約書に代わり、電子契約を利用するケースが増加しています。
ここでは、電子契約と書面契約との違いや、電子契約の法的効力についてご説明します。
電子契約は、PDFなどの電子文書に合意内容を記録し、それに電子署名を付与することによって、紙の契約書に代えるものです。
書面契約では合意内容を紙に記録するのに対して、電子契約では電子文書に記録するという違いがありますが、どちらの場合も契約は口頭で成立していますので、法的効力の面で本質的な違いはありません。
細かな違いとしては、書面契約では契約内容によって収入印紙の貼付を要することがあるのに対して、電子契約では印紙不要という点などが挙げられます。
また、紙で作成した契約書は紛失や破棄のおそれがあるのに対して、電子契約ではセキュリティ対策が不十分であれば改ざんや情報漏洩のおそれがあるため、保管上の注意点が異なるという違いもあります。
なお、事業用定期借地契約など一定の種類の契約については電子契約を利用できず、紙の契約書を作成する必要があります。
電子契約の法的効力は、紙の契約書の法的効力とまったく同じです。
どちらも、「合意があったことと、合意内容を証明する文書」であり、裁判では有力な証拠となります。
ただし、この法的効力が認められるためには、「署名・押印」の問題をクリアしなければなりません。
署名・押印がなくても契約書が無効となるわけではありませんが、そのままでは証明力が弱いです。
しかし、署名・押印があれば、民事訴訟法228条4項に基づき、その文書は真正に成立したものと推定されるため、高い証明力が付与されます。
「文書が真正に成立した」とは、その文書の作成名義人とされる本人の意思に基づいて作成されたことを意味します。
「推定される」とは、その事実を争う側が、異なる事実を証明しない限り、その事実が真実として取り扱われるという意味です。
この推定がはたらくことにより、裁判で契約書を有力な証拠として利用できるようになるのです。
電子契約では物理的に署名・押印することができませんが、電子署名法で定められた要件を満たす「電子署名」を付与することにより、その電子文書が真正に成立したものと推定されます。
電子署名を付与するには、電子証明書(本人性を証明するもの)とタイムスタンプ(非改ざん性を証明するもの)の2つを、その電子文書に付与する必要があります。
有効な電子署名が付与されていなければ、その電子契約には証明書のとしての法的効力が認められないことに注意が必要です。

有効かつ証明書としての法的効力を有する契約書を作成するためには、署名・押印の問題以外にも、以下のポイントに注意する必要があります。
契約書には、当事者間で合意した内容を全て記載しましょう。
口頭で合意した事項であっても、契約書に記載されていなければ、トラブル発生時には別の証拠で証明する必要性が生じます。
契約書に盛り込むべき内容はケースごとに異なりますが、基本的に以下の事項については交渉の上で合意し、契約書に記載する必要があると考えられます。
「そこまで書かなくてもよいだろう」「信頼関係があるから細かな記載は不要」などと安易に考えて省略したり、曖昧な表現や抽象的な表現で済ませたりすると、後にトラブルの火種となるおそれがあります。
当事者間で合意した事項であっても、法律に反する内容には法的効力が認められません。
例えば、雇用契約書の中に、労働基準法をはじめとする労働関係法令に違反する条項があれば、その条項は無効となってしまいます。
商品を販売する際の売買契約書でも、一方的に自社に有利な内容の条項などは、消費者契約法や特定商取引法に抵触し、無効となる可能性があります。
その他にも、各業界に特有の細かな法律の規定との整合性についても確認しておかなければなりません。
「契約書に明記し、双方が署名・押印すれば大丈夫」といった考え方は危険です。
必ず、最新の関連法令との整合性を確認しましょう。
相手方と契約書を取り交わした後では、不備が発覚しても容易には訂正できない可能性があります。
そのため、事前に弁護士などの専門家によるチェックを受けておくことも重要です。
作成した契約書に問題がないかを法的観点から確認することを、「リーガルチェック」といいます。
リーガルチェックを行うことで、法的に不利な条項が含まれていないか、想定外の法的リスクが潜んだ条項がないか、などを確認し、事前に修正することができます。
弁護士に依頼すれば、より精度の高いチェックを受けることができますし、トラブル発生時にも適切な解決を図りやすい条項を盛り込むことも可能となります。
契約書に十分な法的効力を持たせるためにも、弁護士によるリーガルチェックのご利用を検討してみるとよいでしょう。

契約書は、当事者間の合意内容を明確化し、双方の認識のズレを防止するとともに、合意した事実と合意内容を証拠化するための重要な書類です。
証明書としての法的効力を確保するためには、署名・押印などの法的要件を満たすとともに、関連法令との整合性にも注意する必要があります。
また、記載内容次第では、思わぬ法的トラブルを招くリスクがあることにも注意が必要です。
日々の取引を円滑に進めるためにも、契約書を作成する際には弁護士によるリーガルチェックを受けることをおすすめします。
弁護士法人山本総合法律事務所は、群馬県内で企業法務の経験を豊富に有しており、その中でもリーガルチェックは日常的業務として、丁寧かつスピーディーに対応しております。
顧問弁護士のご契約をしていただければ、よりスムーズなリーガルチェックの提供が可能となります。
群馬で契約書のチェックや、契約書の不備から発生した法的トラブルなどでお困りの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。
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経営者様からのご相談につきましては、初回に限り無料で対応しておりますので、
企業経営でお困りの方は、まずはぜひ一度お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
山本 哲也
弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。