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ハラスメントで労働審判を申し立てられた場合の会社側対応を弁護士が解説

ハラスメントで労働審判を申し立てられた場合の会社側対応を弁護士が解説

ハラスメントで労働審判を申し立てられたときの初動対応

弁護士に相談している様子

損害賠償・信用低下などのリスク

社員からハラスメントで労働審判を起こされた場合、会社側には様々なリスクが生じます。
まず指摘したいのは、多額の損害賠償を命じられるリスクです。
労働審判や訴訟でハラスメントによる会社の責任が認定されれば、安全配慮義務違反や注意義務違反として会社も損害賠償責任を負う場合があります。
ハラスメント加害者が従業員であれば、会社も使用者責任に基づき従業員と連帯して賠償責任を負うこともあり得ます。
さらに、ハラスメント問題が発覚すると会社の社会的信用の失墜につながり、社内外からの信頼低下という打撃も免れません。
近年はSNS等で社内トラブルが広まりやすく、いったん「ブラック会社」と評されれば会社イメージが大きく損なわれる恐れがあります。
つまり、ハラスメントは会社経営に多方面で深刻な影響を及ぼしかねないのです。

こうしたリスクを踏まえ、労働審判を申し立てられた場合には初動から慎重かつ適切な対応が求められます。

スピード重視の手続きに早期対応が不可欠

訴訟と違い、労働審判は非常にスピーディーで、原則3回以内の期日で結論が出されます。
実務的には、1回目の期日でほぼ審理が終了し、和解へ向けた話し合いがされるケースが多いです。
そのため、労働審判を申し立てられた会社は、第1回期日で必要な主張と証拠を全て出し切る必要があります。第1回期日が勝負なのです。
そして、労働審判は申立てから概ね40日以内の日付が第1回期日として指定され、会社側は第1回期日の7~10日前までに答弁書を提出するように期限が設定されます。
実質的な準備期間は約3週間程度しかありません。
前述のとおり第1回期日が勝負ですから、この3週間で必要な準備を整えなければなりません。
労働審判で会社側に大きな負担となるのは、このタイトなスケジュールといっても過言ではありません。

タイトなスケジュールの中で準備を進める上では、初動対応が肝要です。
申立書が届いたら、まず期日呼出状で第1回期日の日時・場所と答弁書の提出期限を正確に確認しましょう。
次に、労働者から出された申立書と証拠を確認し、どのような事実関係に基づきどのような請求を受けているのか、それを裏付けるどのような証拠があるのかを分析します。
続いて、社内での事実確認のため関係者のヒアリングや資料の収集を手配しましょう。

ここまでが、最低限必要となる初動対応です。

会社側が確認すべき3つのポイント

ポイント

発言や行為の内容・頻度など事実関係の把握

申し立てられたハラスメントの事実関係を正確に把握する必要があります。
申立書には労働者側の主張するハラスメントの内容が記載されていますが、会社側でも社内で起きた出来事を改めて確認・整理する必要があります。
「いつ、どこで、誰が、どのように、なぜ、何をしたのか」といったハラスメントの発言・行為の内容や頻度を可能な限り詳細に洗い出しましょう。
ハラスメントをしたと指摘されている従業員や現場に居合わせた従業員など関係者へのヒアリングを実施し、事実関係を丹念に調査します。
この際、人間の話には主観が混じることもあるため注意深く聴取します。
パワハラとされている言動の内容や経緯、繰り返しの有無なども含め、何があったのかを具体的に確認することが初動対応の基本です。

社内制度や記録の有無を確認

次に、社内におけるハラスメント対応の制度やこれまでの対応記録をチェックしましょう。
会社には法律上、職場でのパワハラ防止措置を講じる義務が課されています(大会社は令和2年6月から、中小会社も令和4年4月から義務化)。
そのため多くの会社では相談窓口の設置や就業規則でのハラスメント禁止規定などの対策を取っているはずです。
労働審判を申し立てられたハラスメントについて、過去に社内相談があったか、会社として何らかの対応を取った履歴が残っていないか確認します。
もし被害社員から社内の相談窓口等へ申告があったのに適切な対処をせず放置していたような場合、それ自体が安全配慮義務違反として不利な事情となり得ます。
逆に社内で調査を行い一定の措置を講じていた場合は、会社が適切な対応をしていたことを示す重要な証拠資料となります。
社内制度が整備されていたか、過去の相談や処分の有無、その記録が残っているかを必ず確認しましょう。

証言・目撃証言・記録など証拠の整理

事実関係を把握したら、次は証拠の収集と整理です。労働審判は主張だけでなく、その裏付けとなる証拠を第1回期日までに出し切ることが求められます。
関係者の供述だけでは「言った・言わない」の水掛け論になりがちなため、客観的な証拠を揃えて主張の信憑性を高める必要があります。
例えば、問題のやりとりが残るメールの履歴、発言を録音した音声データや現場の動画、被害社員が病院を受診していれば診断書、本人が日々つけていた日記・メモなどが考えられます。
前述の社内制度やその対応記録も証拠となります。
雇用契約書など基本的な労務資料も提出を求められる場合があります。
証拠には書面やデータ(書証)だけでなく関係者の供述(人証)も含まれますので、客観的証拠が乏しい場合には人証の活用も考えられます。

事実関係の確認と証拠の整理まで完了すれば、会社側の主張とそれに説得力を持たせるための証拠構成の大枠が固まります。

弁護士と連携して進める実務対応

弁護士と連携して進める実務対応

答弁書と主張の整理・期限遵守

労働審判では会社側の反論を書面化した答弁書を期限内に提出することが極めて重要です。
答弁書とは、申立人である従業員の主張に対する会社側の回答・反論をまとめた書面で、これを提出しないと会社側の言い分を十分に主張できません。
答弁書は必ず期限内に提出しましょう。

答弁書には申立書に記載さている請求の趣旨に対する答弁、申立書記載の事実に対する認否、会社側の反論とその理由となる具体的事実や争点に関連する重要事項など記載します。
しかし、タイトなスケジュールの中で充実した答弁書を作成するのは容易ではありません。
社内だけで対応するのが難しければ早期に弁護士の協力を仰ぐことを検討してください。
労働審判では提出された答弁書と証拠に基づき第1回期日に事実確認や当事者への質問(審尋)が行われ、裁判所の心証形成に大きく影響します。
答弁書の出来具合で勝負がほぼ決まりますから、必要な主張を適切な法的理論と共に主張しなければなりません。
期日本番では法律的な論点整理も求められるため、可能であれば弁護士と連携しながら主張を組み立てていきましょう。
なお、正当な理由なく第1回期日を欠席すると5万円以下の過料に処される場合があり、答弁書を出さないと労働者側の主張がそのまま認められてしまうリスクもあります。
綿密な答弁書の作成と提出期限厳守は、会社防衛の要と心得てください。

社内調査と証拠のチェック

弁護士と相談しつつ、社内での追加調査や証拠の点検も行いましょう。
会社側が重要視していない事項でも、弁護士から見ると重要であることはよくあります。

収集した証拠も、弁護士の助言を受けながら取捨選択と精査を行います。
無益な証拠や、むしろ会社を不利にしてしまう有害な証拠は提出しないのが基本ですが、隠匿するとかえって大きなダメージとなることもあるため、開示すべきものは提出するという選択もありえます。
どの証拠をどう活用すべきか判断に迷う場合は弁護士と相談し、会社を防衛するための万全な準備を整えましょう。

出席者の選定と対応体制の構築

労働審判では第1回期日で当事者や関係者に対する審尋(質問)が行われるのが通常です。
会社側も期日に出席して裁判所からの質問に答える必要がありますので、出席者を事前に選定しておかなければなりません。
基本的には会社の代表者か、担当役員等の決裁権のある人が出席します。トラブルの事実関係を知る人物もできるだけ同席させるべきです。
ハラスメント事案であれば、指摘された加害者本人や目撃者が候補になります。こうした関係者がその場で事実を説明できれば、会社側の主張に具体性と説得力が増すでしょう。
もっとも、ハラスメント加害の疑いがある社員を出席させるかどうかは慎重に判断してください。
本人が感情的になってしまう恐れがある場合などは、むしろ出席させない方が無難です。弁護士へ依頼すれば弁護士も同席し、助け舟を出せます。

出席者を決めたら、期日へ臨むための準備をしましょう。会社側の主張は答弁書にまとまっていますから、労働審判当日までに答弁書を改めて確認する必要があります。
裁判所からどのような質問が来ても適切に回答できるよう、予行演習をしておくと安心です。

また、ハラスメントが事実なのであれば、金銭解決も視野に入りますから、和解金として何円までなら払えるのか、予算取りもしておくと早期解決が期待できます。

初動で避けたい3つの対応ミス

初動で避けたい3つの対応ミス

被害を軽視した主張の甘さ

最も避けるべきは、ハラスメント被害を軽視したような姿勢をとることです。
例えば「それは指導の範囲でパワハラではない」「本人が気にしすぎているだけ」などと安易に主張すると、裁判所から会社の誠実さを疑われかねません。
会社が「指導のつもりだった」と弁解しても、その態様や被害者の受けた精神的苦痛が大きければ会社の責任と認定される可能性があります。
労働審判にまで至った以上、事態は深刻だと認識しましょう。
ハラスメントの事実がなかった場合でも、主張を組み立てる際には根拠となる証拠を示しつつ丁寧に説明することが大切です。

会社として主張すべきポイントは主張しつつも、被害を軽んじているように見える態度・言動は厳に慎みましょう。
謙虚かつ冷静に、筋の通った主張を心がけることが大切です。

初動対応の遅れ

労働審判では初動対応のスピードが極めて重要です。
対応が遅れることで起こり得るミスの一つが、関係者の証言に齟齬(食い違い)が生じてしまうことです。
人の記憶は時間とともに薄れたり変容したりするものです。
事実確認を先延ばしにしていると、後から関係者に聞き取りをした際に「当時のことはよく覚えていない」「〇〇さんからこう聞いたのでそう思っていた」など、証言があいまいになる恐れがあります。
周囲の社員同士で事後に口裏合わせをしてしまい、証言内容が不自然に揃ってしまうケースもあります。
こうした曖昧さや不自然さは労働審判で指摘され、会社側の主張の信用性を低下させる要因となります。

また、初動対応が遅れれば、それだけ答弁書の作成に割ける時間も減りますから、会社として必要な主張ができなくなるおそれもあります。

初動対応の遅れは損害拡大に繋がりますから、スピーディーな初動対応が鉄則です。

証拠の散逸

証拠の散逸にも注意が必要です。
例えば、ハラスメント発生現場の防犯カメラ映像が一定期間で上書き消去されてしまう設定になっていたり、メールデータが自動削除される期間を過ぎてしまったりすると、重要な証拠を失ってしまいます。
申立てを受けたら関係しそうな記録やデータの保存期間を確認し、必要に応じて保存措置をとることも検討してください。
さらに、社内のハラスメント相談記録票や調査報告書などがある場合、それらは重要資料になりますから必ず保管しておきましょう。
証拠は全て第1回期日で出し切る必要があるため、 「探したが見つからなかった」「確認に時間がかかっているため2回目の期日で出す」という事態は避けるべきです。
迅速な初動対応もさることながら、日頃から記録整備を怠らず、いざというときに証拠を迅速に準備できる体制を整えておくことが肝心です。

ハラスメントの労働審判への対応チェックリストと相談のタイミング

ハラスメントの労働審判への対応チェックリストと相談のタイミング

事実関係・制度・証拠・体制・期限の整理

最後に、労働審判対応に臨む際の会社側チェックリストを確認しましょう。
以下のポイントについて整理できているか、チェックしてみてください。

  • 事実関係の整理: 社内調査により把握したハラスメントの事実関係(発生日時・場所・状況、当事者の言動内容や頻度、経緯など)は正確に整理できているか。特に、労働者側の主張との差異は何か、その差異を説明するための準備ができているか。
  • 社内制度・対応履歴の確認: ハラスメント防止の社内ルールや相談窓口など体制は整っていたか?会社がこれまでに取った措置や記録は揃っているか?その対応が適切であったことを示す証拠を用意できているか。
  • 証拠の収集・整理:会社の主張を裏付ける客観的な証拠は出揃っているか(メール、録音、日記、証言メモ等)。
  • 出席者と対応体制: 第1回期日に出席すべき会社側関係者(代表者・人事担当者・当事者・証人等)は決まっているか。当日の役割分担、弁護士との連携方法など期日に臨む体制面は整っているか。
  • 期限遵守と手続準備: 期日呼出状に記載された日程・提出期限に漏れはないか。労働審判後に不服がある場合の異議申立期限(原則2週間以内)や方法も把握しているか。

弁護士に相談すべき最適なタイミング

弁護士への相談は早ければ早いほど良いでしょう。
労働審判の呼出状が届いた時点が、一つのタイミングです。
迅速な準備が求められる労働審判へ適切に対応するためには専門家の力が不可欠です。
弁護士であれば、限られた期間内での答弁書作成・証拠収集をサポートし、法的に有効な主張を組み立てることが可能です。
また、第1回期日に向けた審尋対応のアドバイスや、和解の落としどころの見極め、労働審判へ会社側担当者と共に出席する、審判結果に対する異議申立て(その後の訴訟対応)まで一貫した対応が期待できます。

もちろん、事前に相談しておくに越したことはありません。
ハラスメントの内部相談があった段階で予防策として顧問弁護士に意見を求めておけば、より迅速かつ適切に対応しやすいです。

労働審判対応は山本総合法律事務所へ

所員一同

ハラスメントの労働審判への対応は、スピードと専門性が要求される難しい手続です。
会社を守るためには、法律のプロフェッショナルである弁護士と二人三脚で進めるのが得策です。

当事務所には数多くの実績があり、たしかな経験とノウハウを持つ専門の弁護士がご相談をお受けします。
まずはお気軽にお問合せください。

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この記事を書いた人

山本 哲也

山本 哲也

弁護士法人 山本総合法律事務所の代表弁護士。群馬県高崎市出身。
早稲田大学法学部卒業後、一般企業に就職するも法曹界を目指すため脱サラして弁護士に。
「地元の総合病院としての法律事務所」を目指し、個人向けのリーガルサービスだけでなく県内の企業の利益最大化に向けたリーガルサポートの提供を行っている。

山本 哲也

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